イタリア・ミラノに拠点を置くマリア・フランチェスコ社(Maglia Francesco)の創業は1854年。
商品のすべてが社内の職人によるハンドメイドで作られるイタリア最古の傘専門ブランドです。
創業者はブランド名と同じくFrancesco Maglia。
マリア家はもともとイタリアのヴァルガアンナ出身。
代々、木こりと石炭づくりを営んでいる家でしたが、創業者のFrancesco Magliaは、イタリアでも有数の工業地帯であるブレシア県のモンテキアリにある工房で、1850年に職人見習いとして傘づくりを14歳で始めます。
4年後の18歳にはヴェラヌオーヴァにある小さな傘工房に入社しますが、やはり才能があったのか、そこから中世のイタリアで王権の首都でもあったパーヴィーアに移り、彼自身の工房をスタートします。
これがマリオ・フランチェスコ社のはじまりです。
現在のマリア・フランチェスコ社というと、傘ブランドとしてのイメージが強いですが、1923年までは麦わら帽子も作っていました。
また、マリア家はイタリア人らしく伝統を重んじる家系で、代々、息子のことをフランチェスコと呼ぶようで、現在のフランチェスコで5代目(上記の写真右)になります。
この5代目フランチェスコの情熱は傘づくりだけでなく、傘そのものに注がれており、傘がテーマになっている写真やカード、道具であれば何でも買い集め、また熱心に研究をしています。
そうした品々は出張するたびに旅先で買い集めるようで、その数はゆうに3000点を超えており、展示会も開かれました。
マリア・フランチェスコ社が、商品づくりにおいて第一に考えるのは職人としての哲学。
すべてのお客さんに満足してもらえるように商品の1点1点をすべてオーダーメードで作っています。
しかも、すべての製造工程を社内一貫だけでなく、ハンドメイドで作っています。
職人らしく傘の作り方だけでなく素材に対するこだわりも強く、傘の布地部分にはコモ産のシルクを使っています。
コモといえば、カエサルなどのローマの歴代皇帝たちが保養に訪れたり、最近ですと映画「スターウォーズ」のロケ地としても有名なイタリア屈指のリゾート地ですが、ヨーロッパ全土のシルク産業の中心地としての顔もあります。
ちなみにヨーロッパの繊維産業に流通するシルクの約80%がコモ産だと言われています。
ただ、マリア・フランチェスコ社の商品の最大の魅力といえば、やはりシャフトやハンドルなどの傘骨部分にあります。
傘骨は品質の高い天然の木材や革、そして鉄のみで作られますが、特に目を見張るのが使用されている木材のバリエーション。
栗、楓、藤、りんご、竹、ヒッコリーオリーブ、ヘーゼルナッツチェリー、トネリコなど豊富なバリエーションです。
また、つぎはぎのない一本木の削り出しで、研削から研磨、曲げまでもちろん手作業で行います。
先端分はニッケルの真鍮や動物の角などを使います。
マリア・フランチェスコ社の商品はピッティ・ウォモに出品されています。
ピッティ・ウォモは、イタリアのフィレンツェで1月と6月の年2回に開催される世界最大のメンズ向けのプレタポルテ見本市です。
正式名称はピッティ・イマージネ・ウォモ。
お膝元であるイタリアのブランドはもとより世界各国のブランドが一堂に介し、それを買い付けるために世界中のバイヤーが集う展示会です。