私たちが普段なにげなく選んでいる「柄」や「色」。
とくに男性にとって、カラフルなファッションはどこかハードルが高いものと感じられることがあるかもしれません。
けれど、ほんの少し歴史をひもといてみると、実は「男性が色を楽しむこと」は、とても自然で豊かな文化の一部だったことが見えてきます。
平安〜江戸:着物文化は“色と柄”に満ちていた
日本では、平安時代から明治にかけて、着物が日常着でした。
この時代、色には強い意味があり、柄には物語や願いが込められていました。
• 女性の着物はもちろん華やかで、季節を表す「襲(かさね)の色目」や繊細な模様で彩られていました。
• しかし、男性もまた色を楽しんでいたのです。
戦国時代の武将は、威厳と個性を表すために、赤や金、鮮やかな柄の陣羽織を身にまとい、公家たちは優雅な色合わせの装束を着ていました。


江戸時代:抑制の中に“粋”を宿す
江戸時代、庶民の贅沢を禁じる「奢侈禁止令」によって、
茶・藍・鼠などの地味な色を身にまとうことが礼儀とされていました。
しかし人々は、その制約の中でも「粋(いき)」の美学を育みます。
たとえば、裏地や帯、羽織の裏にさりげなく華やかな色を使ったり、
一見控えめな装いの中に、柄や仕立てで密かなこだわりを込めたり——。
中でも人気を集めたのが、市松、麻の葉、矢絣(やがすり)などの抽象的な幾何学模様でした。
意味を持ちながらも主張しすぎず、渋い色味の中に品と洒落を添えてくれる存在だったのです。

明治〜昭和:色を失っていく男性服
明治時代、西洋の軍服やスーツ文化が導入されると、
男性は「黒・グレー・ネイビー」中心の装いをするようになります。
特に戦後の日本では、サラリーマンの制服化により、「男性=無彩色」という価値観が強固に。
この頃から、「カラフルな服=女性や子ども向け」という認識が広がっていきました。

現代:色を取り戻す時代へ
しかし現代は、多様性を尊重する時代。
2000年代以降、イタリアファッションやストリートカルチャーの影響を受け、男性の装いにも再び「柄」や「色」が戻ってきました。
鮮やかなブルー、爽やかなレモンイエロー、クラシカルな花柄や幾何学模様…。
色や柄は、ただ「派手」なのではなく、その人の心や余裕、遊び心を映し出す“言葉のいらない表現”として注目されています。


なぜ、日本男性が色と柄を楽しむことが大切なのか?
「無難でいること」と「自分らしくあること」は、似ているようでまったく違います。
男性が色や柄を自由に楽しむことは、
過去に失われてしまった美意識を取り戻すこと。
そして、“自分の気持ち”や“感性”を正直にまとうこと。
それは決して装飾的なことではなく、
自分自身と向き合い、人生をもっと豊かに生きるための手段なのです。
無彩色の世界に、ほんの一滴の色を。
そこにこそ、あなたらしい輝きが宿ります。
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